2013/04/01更新
食べてくれ! |

ダリは「異説・近代藝術論」(書籍1-1958-06)の中で、「美は食べられるものであるか、さもなければ、存在しないであろう」と言っています。この言葉はアンドレ・ブルトンの「美は痙攣的であるか、さもなければ存在しないだろう」の言葉を受けたものです。ダリのこの言葉で、当時のパリ社交界では「食べられるかどうか」が美しさの尺度になりました。ストラヴィンスキーのコンサート評として「とても美しくねばねばしてたわ!」のような会話が飛び交いました。
ダリはこの写真にあるパリの地下鉄入口を見て「たべてくれ!」と言っているようだと述べています。そのことは「ナルシスの変貌(ダリ芸術論集)」(書籍1-1971-02)の写真で説明されています。また、「異説・近代藝術論」では「ガウディを擁護するためにモダンスタイルとパリ地下鉄の入口についてミノトール誌に堂々たる文章を書いた。」と述べています。
正に、モダンスタイル建築の可食的な、恐怖させる美です。 デザインとしてはアール・ヌーボー様式で、植物の形態がモチーフとなっています。
私はダリが見た地下の入口をどの駅で見ることができるかについて、前もって調べないでパリへ行きました。パリの地下鉄網は充実していると聞いていたので、現地に行けばなんとか探せると思っていたのです。しかし、実際に見つけるまでには時間がかかりました。今回の調査では3か所で遭遇することが出来ました。
Anvers駅(アンヴェール)、
Palais Royal Musee du Louvre駅(パレ ロワイヤル ミュゼ デュ ルーヴル)
Tuileries駅(チュイルリー)
今回の訪問では地下鉄について予め何も調べていませんでしたが、「パリメトロ研究所」というホームページがあることをこの原稿作成直前に知りました。とても参考になりました。そのホームページによれば、これらのデザインは建築家エクトル・ギマールが行ったそうです。しかしながら、改修工事等で少なくなってきているそうです。
私が写真を撮ってきた3駅の入口には庇がありませんでした。現存するギマールが作った庇のある駅入口は3駅のみになってしまったそうです。
Anvers駅(アンヴェール) |

私はホテルからモンマルトルのテルトル広場やエスパス・ダリへ行く途中でこの駅の入り口を見つけました。下調べをしないで見つけられたので幸運に感じました。

ダリが「食べてくれ!」と叫んでいる様に感じた気持ちを共有出来た気がしました。

このデザインは鋳型で製作してるのでしょう。

この照明を見てトム・クルーズ主演の映画「宇宙戦争」を連想してしまいました。

照明器具を支えている細い2本の支えの根元付近に何かが折れてしまった痕跡があります。この先には何が付いていたのでしょうか。
Palais Royal Musee du Louvre駅(パレ ロワイヤル ミュゼ デュ ルーヴル) |

です。

ダリは何度もルーブル美術館を訪れていますから、この駅の入口の柵で「可食的な柵に気が付いたのでしょうか。
ただし、ダリは地下鉄には乗れませんでしたからこの入口を実際に出入りしたのではないと思います。
ダリが初めてパリへ一人旅した時に、ロシア人の画家に地下鉄に乗せてもらったことがありました。その画家チェリチェフがダリの降りる駅の一つ前の駅で降りることを知り、ダリは恐がって泣き出してしまいました。それ以来ダリは地下鉄は使わず、タクシーを使うことに決めました。
Tuileries駅(チェイルリー駅) |


ホテル・ムーリスに一番近い地下鉄駅ですが、地下鉄嫌いのダリは使わなかったのでしょうね。

その他の参考画像 |