2012.03 ポンピドゥーセンター、ダリ大回顧展

2016年01月15日更新

ダリ大回顧展

 パリのポンピドゥーセンターで大規模なダリ展が開催されました。初期のシュール作品、「マグロ漁(全画集No.1272)」などの大作、「白いロブスター電話(全画集No.618)」などの立体物、立体視作品、メイ=ウェストの部屋、ダリの様子を映したDVDの上映室には白いリップソファーが配置してあり、様々な演出がしてありました。
 私が訪問したのは開催期間最後の日曜日ということもあってか長蛇の列ができており、チケットを買うまで30分、買ってから入場するまで約2時間待ちという状況でした。翌日が月曜日なので、チケット売り場で「明日は空きそうですか?」と聞いてみると、「分かりません。」という素気無い回答でした。確かに、明日のことは誰でも分からないと言うしかないですね。
 上の写真は入場口の様子です。

ポンピドゥーセンターの外側に設けられたダリ展の看板です。画像はフィリップ・ハルスマンが撮った写真ですが、取って付けたようだという言葉は、このような場合に使ったらいいのでしょうか。
ポンピドゥーセンターの特徴でもある外側通路にできた長い列です。この写真はダリ展の展示フロアー(6階)にある外通路です。途中はエレベーターも使いますが、チケット購入は1回ロビーで購入し、一度地下一階に降りて列の最後尾は1階でした。ダリ展の人気の程が分かります。
 子供は退屈してしまい、おとなしく列の中に留まってはいれません。
展示状況
展示室の中にはいると、そこはドーム状になっていて、ハルスマンが撮影した卵のダリが映し出されています。さらに、心臓の鼓動の音が響いています。
 これは、ダリが生まれる前の母親のお腹の中です。つまり、ダリが生まれるところから展示が始まっていたのです。

 このドームを出ると、「妹(アナ・マリア)の肖像(全画集No.197)」と「父の肖像(全画集No.202)」がありました。
 ここには、「ダリの母ドーニャ・フェリーパ・ドメネク・デ・ダリの肖像(全画集No.58)」もほしかったでしょう。この作品は諸橋近代美術館で所蔵しています。
展示室を進んで行くと1920~30年代のシュール作品が展示されています。あの「記憶の固執(全画集No.360)」が特別な説明もなく何気なく展示してありました。
 左の写真は、私が模写した「頭蓋骨のハープの乳を搾る平凡な閣僚の大気的東部(全画集No.452)」のオリジナルです。
 模写の色彩は、ほぼ同じに仕上げることができたことを確かめられました。
ミレーの「晩鐘」のオリジナルがありました。これは、ダリの晩鐘シリーズに因んンで展示したのだと思います。
 しかし、ミレーのオリジナルが展示しているにもかかわらず何の説明もありませんでした。
 左の写真のとおり「ガラの晩鐘(全画集No.555)」が展示されていましたが、同時に観ることができない位置関係でした。ここには「ミレーの晩鐘の考古学的回顧(全画集No.556)」があってほしかったです。
 日本の美術館だったら晩鐘コーナーを設けて丁寧な説明をしたことでしょう。
 ところで、「晩鐘」のオリジナルはセーヌ河岸のオルセー美術館の所蔵だったでしょうか。
フェルメールの「レース編みの娘」がありました。隣には「フェルメールの「レース編みの娘」の偏執狂的批判的絵画(全画集No.1076)」がありました。
 ダリが犀の角の群れに「レース編みの娘」が浮き出す絵を描いたものです。
 ダリお得意のパフォーマンスで、動物園の犀のスペースにフェルメールの「レース編みの娘」のポスターを持ち込んだのはパリだったと思います。
 ここにも、何の説明文もありません。説明文が無いと先入観がなくていいとの考え方もありますね。
 私の感覚だと、同じ額を作らせます。
 私は翌日にルーブル美術館へ行き、フェルメールのオリジナルを観ましたので、ここにあったのはレプリカだったようです。確かにオリジナルは縦長でしたが、ここにあるのはほぼ正方形で、ダリの作品と比較するようにトレミングされているようです。
 もしかすると、ミレーもレプリカだったのでしょうか。
「メイ・ウェストの顔(全画集No.554)」の体験型展示です。
 元々はフィゲラスの劇場美術館にあります。フィゲラスでは階段を登り、髪の毛に似せたカーテンの間から壁の絵やリップソファーを観るとメイ・ウェストの顔に見える仕組みになっています。
 ここでは、階段を登る代わりに上部にカメラをセットし、そのカメラの映像をスクリーンに映し出す仕組みになっています。その映像を観るためにはリップソファーに腰掛けることになります。
 左の写真でカメラを持ってリップソファーに腰掛けているのが私です。記念写真を撮るために順番待ちをしている人が画面の右側に写っています。
 スクリーンの上側にある黒い物が、スクリーンに映し出すカメラです。
今回のダリ展には立体視作品が多く展示されました。これらの作品を立体視するためには、左右の配置を正しく行う必要があります。
 残念ながら正しい配置だったのは「太陽のはるか彼方のまったく裸の黎明をガラに見せるために雲の形をした金羊毛を剥ぎ取るダリの手(全画集No.1480,1481)」のみでした。
 それ以外は左右が逆に配置してあったので、立体視することが出来ませんでした。そもそも立体視の見方の説明がありません。あれば展示方法も正しく出来たでしょう。
 鏡を使った展示をしていたのは左の写真のとおり「6枚の本当の鏡・・後ろ姿のダリ(全画集No.1358と同じ赤と青カーテンの作品)」のみでした。
左の写真は立体視作品の「ガラのキリスト(全画集No.1485,1486)」です。
 向かって右側の絵は右目用で、左側の絵は左目用です。人は視線左右外側に拡げることは出来ませんが、を交差することはできます。
 この作品を左右逆に展示してくれれば、視線を交差させて立体視することができました。
 立体視の原理については、このホームページの「その他」「立体視の原理と体験」に詳しく説明しています。
 ちなみに、図録ではこの写真とは逆に左右正しく掲載されていますので、立体視を体験できます。
 また、左右に配置すべきものなのに、上下に展示してあるものもありました。これだけの大回顧展が立体視の原理を理解しないままに開催されていることに大きな驚きと落胆がありました。
展示階の中央部にはダリの映像上映室がありました。床には白いリップソファーが7~8基置いてあました。そのソファーは樹脂製で中に照明が点けてあり、暗闇に浮かび上がっていました。
 ご覧の様にソファーはなかなか空かないので、腰掛けるまでには床に座って20分程度待ちました。
ポルト・リガトの風景が映し出されています。この横長のスクリーンは、ダリのアトリエがあった卵の家の中庭に設けられた窓のイメージになっています。
その他参照映像