2016.08 ダリ展 京都市美術館

2016/08/24資料

ダリ展の外観

 今回のダリ展は国内では久しぶりに開かれる大規模なもので、この京都市美術館と国立新美術館の2個所で開催されます。2006年に上野の森美術館で開催された生誕100年記念のダリ回顧展以来のものとなりました。主催者は京都市美術館ですが、ダリ=サルバドール・ダリ財団(フィゲーラス)、サルバドール・ダリ美術館(セントピーターズバーグ)、国立ソフィア王妃芸術センター(マドリード)の作品の他に日本国内の主要な作品も展示して充実を図った展示会になっています。
 東京での展示では若干の作品が追加されると聞いていますので楽しみにしています。
 上の写真は、京都市美術館の正面に出された看板です。日曜日のお昼過ぎに行きましたがあまり混んでいませんでした。しかし、私が帰る3時前には炎天下に行列ができていました。

全体の印象

 今回は国立ソフィア王妃芸術センターが出品している作品が多い印象です。私はまだソフィア王妃芸術センターを訪問したことがないので、初めて観る作品がありました。作品数は全部で100点以上ありましたが、いわゆる大作と言える作品がありませんし、「パン籠」関係や「ミレーの晩鐘」関係がないところが少し弱かったかな?

日本国内の作品

 今回のダリ展には日本国内の美術館から作品が出品されています。日本国内のダリ作品所蔵美術館といえば、諸橋近代美術館です。「アン・ウッドワードの肖像」(全画集No.1069)と「ビキニの3つのスフィンクス」(全画集No.912)の2作品が展示されました。9月14日からの東京展では「テトォアンの大会戦」(全画集No.1207)が追加で展示されるようです。国内で最大の作品ですので、国内作品の存在感を示せそうです。
 私が初めて観る作品もあります。三重県立美術館の「パラディオのタリア柱廊」(全画集No.670)はなかなか訪れる機会が作れなくて、今回が初めての鑑賞となりました。
 さらに、図録を見ると「ポルト・リガトの聖母」(全画集No.981)福岡市美術館蔵や「海の皮膚を・・・・頼む」(全画集No.1225)長崎県美術館などが掲載されていて京都会場には展示されていませんので、東京会場では展示されると考えています。

立体視作品

 立体視作品は「雲の中の戦い」(全画集No.1491、1492)が展示してありました。作品の説明には「特別な道具を使って2つの作品を観ると立体的に見える」旨の説明がしてありました。
 この立体視作品を鑑賞者が体験できる展示をしてほしかったといつも思います。今回の展示も右目用の絵を右側に、左目用の絵(戦いが描かれている)を左側に配置しています。ですから、人が道具を使わないで立体を体験するには左右の目の視線を外側に広げないとなりません。しかし、人間は寄り目はできても、目を左右に広げることはできず、結果的に立体を体験することはできません。せっかくの立体視作品があるのに体験できないのは非常に残念です。体験できれば立体視作品の理解に留まらずダリへの理解も深まると思います。
 立体視を体験するための私の提案はとてもシンプルなものです。右目用の絵を左側に、左目用の絵を右側に配置するのです。そうすれば、道具を使わず寄り目をすることで立体を簡単に体験できます。
 立体視の原理をきちんと説明した資料を提示し、ガイドを1名付け、立体視を体験する立ち位置を明示して視界を遮ることの無いように立ち入り禁止の柵を設ければ完璧です。単なる鑑賞でなく体験型美術鑑賞となり、強く印象が残ると思います。
 パリのポンピドゥーセンターでのダリ展では立体視作品が複数展示されましたが、左右の配置がマチマチでしたので、立体視の原理を理解していない方が展示してたのだと思います。
 立体視の原理については「立体視の原理」を参照してください。

メイ・ウェストの顔(全画集No.554)

 「リップソファー」(全画集No.552)などを配置して「メイ・ウェストの顔」(全画集No.554)を体験できるスペースが準備されています。部屋の顎の付近に立って鏡を見るとメイ・ウェストの顔が体験できる仕組みです。ポンピドゥーセンターのダリ展でも同様の仕組みがありましたが、鏡ではなくカメラで撮った映像を正面のスクリーンに映し出す仕組みでした。
 展覧会は写真撮影禁止ですが、このスペースは入口脇に設けられていて写真撮影ができます。

映画の上映

 会場出口付近では映画がDVDで上映されていました。「アンダルシアの犬」「白い恐怖」の一部、「ディスティノ」の3作品がが繰り返し再生されていました。鑑賞用に椅子が10脚程度配置してあり、常に満席でした。上映時間が長くないので休憩にちょうどいい感じでした。

その他、参照映像