2006.10 ダリ回顧展(生誕100年記念)上野の森美術館

正面の看板

 今回の回顧展は2年遅れの生誕100年記念となりました。ダリが生まれたのが1904年ですので2004年にはスペインで記念行事などが開催された他にベネツアやフィラデルフィアなどでは大規模な回顧展が開催されやっと日本での開催が実現したというところでしょうか。今回の作品はフィゲーラスのガラ-サルバドール・ダリ財団とセント・ピーターズバーグのサルバドール・ダリ美術館の作品を集めたものです。
 上の写真は、上野の森美術館の正面に出された看板です。金曜日のお昼過ぎであまり混んでいませんでした。展覧会の期日等は見てのとおりです。
 今回、私は別の日に2回入館しました。1回目はとにかくダリの作品をじっくり観ることとし、2回目はデータ整理を中心としました

全体の印象

 作品数は約90点ほどありなかなか充実している回顧展であると思います。残念なのはいわゆる大作と言える作品が「世界公会議」(全画集No.1185)のみであったことです。美術館は森の中にあって落ち着いた雰囲気があり上野周辺にはダリ展の幟が掲げられ賑やかさが演出されていました。
 ダリの人気を裏付けするように大変な混み具合でした。平日だからか待たずに入場はできましたが、どの作品の前にも人だかりが途切れず並んでいなければ間じかに作品を観ることは出来ませんでした。

「記憶の固執の崩壊」(全画集No.1024)

今回のダリ展のポスターに使われるなどしていて、今回のメイン作品としてたような印象です。展示してあった場所は2階の中央にひとつのスペースをとっていました。偶然なのかもしれませんが、2001年に同じ上野の森美術館で開かれたMoMA展の時に「記憶の固執」(全画集No.0360)が展示された場所と同じところです。
 作品は画集で観るよりも彩度が強く感じられました。MoMA展の時の「記憶の固執」(全画集No.0360)を観て感じたように宝石箱を覗いているような印象を受けました。
 またショップの入り口ではコンピューター制御による吹き付けの手法で描かれた模写(複写?)が数量限定で販売されていました。

「パン籠(1926年)」(全画集No.0249)

 展示してある場所は入場して最初の部屋の一番端でした。この作品の良さや重要性を考慮すれば、「記憶の固執の崩壊」(全画集No.1024)と同レベルのあつかいでもよかったと思います。ただ、ダリを詳しく知らない人にとってはダリらしい絵とは感じないと思います。
 パンの神秘的な輝きでとても神聖な気持ちにさせられました。まるで黄金のようなパンの表面が適度に硬く内側の柔らかな肉を包み込んでいる様子が口の中に広がるようでした。
 今回のダリ展はフィゲーラスのガラ-サルバドール・ダリ財団とセント・ピーターズバーグのサルバドール・ダリ美術館の作品が集まると聞いていたので、もしかしたらフィゲーラスにある「パン籠(1945年)」(全画集No.0870)と並べられるのではないかとの期待を持っていたのですが実現できなかったので残念でした。

立体鏡作品

立体鏡作品は2組展示してありました。ひとつは「太陽の後ろ・・・・」(全画集No.1480、1481)の一組で、もうひとつは「六つの本当の鏡のなかに・・・・」です。壁に向かって右側に左目用の絵を掲げ、向かって左側に右目用の絵を掲げて視線を交差させてそれぞれの絵を見ることで立体視を体験出来る配置になっていました。
 混みあっていたのでなかんか見るタイミングが難しかったですが、両組の絵で立体視を体験できました。立体視をしている前を人が通って視線を遮られると元に戻し難いですね。
 残念なのは図録に見開きで掲載されているのですが2組ともに左右が逆になっています。
 また、ここで新しい発見がありました。一般の画集に紹介されている「六つの本当の鏡のなかに・・・・」は全画集のNo.1358の画像が使われていますが、今回の回顧展にこの作品は展示してありません。展示してあるのは右目用がカーテンが青く描かれた作品(以後、青カーテン)とカーテンが赤く描かれた左目用の作品(以後、赤カーテン)です。このどちらも全画集に掲載されている作品とは別の作品です。一般の画集と今回の図録をよく見比べていただくと一目瞭然です。全てがそっくりな作品ですのでとても紛らわしいのですが、はっきりと区別が出来る部分があります。全画集その他に掲載されている画像では鏡に映っているイーゼルの中央裏側に横長の長方形のシールのようなものが描かれているのに対して、今回の展示作品にはそれが描かれていません。
 青カーテンの作品は未完成として講談社のダリ全集Ⅲ(書籍2-1986-01)に掲載されていますが、赤カーテンの作品の存在は知りませんでしたし初めて目にしました。
 私は今回の2作品が立体視出来るように展示されてあることに感激しましたが、作品本体を観た時に違和感を感じました。私は全画集のNo.1358をフィゲーラスで2度観た時に感じた霊感漂う全体の雰囲気を経験していたので、雰囲気が違うと思ったのです。自宅へ帰ってから他の図集と見比べて異なる作品であることを知りました。
 このことに非常に興味を引かれたので主催者に問い合わせをしましたところ、この作品には複数のバージョンがあるのだそうです。私は今回の回顧展を観に行くまでこのようなことは知りませんでした。
    全画集のNo.1358、 左目用、展示なし、   ほとんどの画集に掲載
    青カーテン      右目用、左側へ展示、ダリ全集Ⅲ(書籍2-1986-01)に掲載
    赤カーテン      左目用、右側へ展示、abeは初めて観る

アンダルシアの犬

 2階の奥では映画「アンダルシアの犬」が上映されていました。上映時間が約17分なので休憩にちょうどいい感じでした。ただ、女性の目を切り裂くシーンがあることを知らないで観ている人が多いようで声があがっていました。

その他の映像