正面の看板 |
今回の名作展は、日本で3回目の展覧会です。ニューヨーク近代美術館の豊富なコレクションの中から75点の作品が公開されています。
上の写真は、上野の森美術館の正面に出された看板です。前を歩く人と較べてみるとその大きさがよく分かると思います。展覧会の期日等は見てのとおりです。
私が訪れたのは木曜日の午前中だったので、あまり混み合っていませんでした。
ダリの2作品 |
照らし出された快楽 | 全画集No.326 | 1929年 | 23.8*34.7cm | シドニー&ハリエット・ジャニス・コレクション |
記憶の固執 | 全画集No.360 | 1931年 | 24.1*33.0cm | ニューヨーク近代美術館蔵 |
この展覧会にはダリの作品が2つ展示されています。内部の写真撮影が禁止されているため、上の図のような展示情況の略図を描いてみました。今回展示されている2作品は、大きさも描かれた年代もほぼ同じで、並べて展示されています。「照らし出された快楽」が左側に、「記憶の固執」が右側に配置されています。
特徴的なのは、この2作品だけが、壁でなく上図のような斜めの台にのせられています。高さはオヘソの高さくらいです。このため、天井のライトが表面のガラスに反射して見づらく感じました。
どちらの絵もほぼ大きさの同じ額に収められていて、一見して標本箱のようです。柔らかい時計の淡いブルーや、黄色に光る岩肌が、コガネムシの光沢のように感じましたし、瑪瑙のような宝石で出来ているような錯覚を覚えました。
◎照らし出された快楽
正直に言って、私の好みの作品ではありません。ただ、この作品にコラージュが使われていていることを知りました。
◎記憶の固執
画集では分からない筆の痕跡まではっきり見ることが出来ました。地べたに横たわる顔のようなものの部分の絵の具が盛り上がっていて、地べたの後から描き加えられたのであることが分かりました。時計の文字盤の淡いブルーはとても綺麗で、宝石のようです。
大きさ |
絵には、その作品にふさわしい大きさというものがあると思います。「記憶の固執」を見ているお客さんの何人もが、「こんなに小さかったんだ」と言っていました。これは、MoMA展を見てきたことを「ダリの掲示板」に書き込みしていただいた中にもありました。
確かに、大きさを予め分かっていて見に行った私でも、「小さいな」と感じました。人間は経験の中で無意識に学習していますから、あの緻密な絵がこんな小さいはずがないと感じてしまうのだと思います。
ダリの絵の中で、このように実際の大きさとふさわしい大きさに、大きな差があるのは、「セックスアピールの亡霊」(全画集No.481)だと思います。画集で絵の大きさを確かめてみてください。