2007.5 ダリ展(生誕100年記念、創造する多面体) 名古屋市美術館

2007年06月03日資料

正面の看板

 昨年の上野の森美術館での回顧展に引き続き大阪~名古屋~札幌で生誕100年記念の展覧会が開催されています。今回は名古屋市へ行くことが出来ましたので、その報告をさせていただきます。ダリが生まれたのが1904年ですので生誕100年ではないのですから、表現にこだわらなくてもいいと思いますが2004年からスペインで始まった記念行事などがやっと日本で開催されているというところでしょうか。
 上の写真は、名古屋市美術館の入り口付近に出された看板です。土曜日でしたがあまり混んでいませんでした。展覧会の期日等は以下のとおりです。
   2007年5月12日~7月11日
   主催 名古屋市美術館 中日新聞社 東海テレビ放送 
       ガラ=サルバドール・ダリ財団 サルバドール・ダリ美術館

全体の印象

 昨年の上野の森美術館以降、大阪~名古屋~札幌とダリ展が日本で開催されることは誠にありがたいです。絵画ではいわるゆ大きな作品と分類出来るのは広島県立美術館所蔵の「ヴィーナスの夢」だけですが、ダリが手がけたファッション関係のデザインが展示されるのは珍しいです。
 また、ダリに関する書籍や原稿などを見ることも出来ました。

「幽霊と幻影」(全画集No509)

 私は今回の展覧会で初めてこの作品を見ました。この作品は現在、大阪市立近代美術館建設準備室の所蔵となっていますので常設されていません。私が日本国内にあるダリ作品の調査にも漏れていたものです。この時期の作品の多くで岩のような存在感の雲が描かれていますが、その代表的な作品であると思います。またルシアが非常に緻密に描かれており、ダリの気持ちを垣間見れたような気がしました。

「ヴィーナスの夢」(全画集No.732)

 広島県立美術館所蔵の「ヴィーナスの夢」が展示してあります。この作品は1939年の万国博覧会でのパヴィリオンに使われたものです。「記憶の固執」(全画集No.360)をベースに(燃えるキリン)や(引き出しのある人物)などが登場します。この作品は幅が4m80cmという大きさで壁一面を占めています。この作品の前には接近防止用のバーが設けられていますが、大きな間隔ではないので画集では分からない凹凸のある画面の肌を充分見ることが出来ます。
 この作品とは別の場所に天井から吊るされた傘の下にパヴィリオンの資料のコーナーが設けてあり制作中のガラやダリの様子が窺えます。またマネキン・ピアノやマーメイドの写真が展示してありダリのユニークさが感じられます。

立体鏡作品(全画集No.1407、1408)

立体鏡作品が1組展示してありました。「ガラの足」(全画集No.1407、1408)の一組です。壁にふたつを左右に並べて展示し、立体視の作品である旨の他に、このままでは立体視出来ないことの説明がありました。その脇には立体視を体験出来るように2枚の鏡を使った箱の中にレプリカが置かれていました。表面のガラスに額を付けて見るように説明書きがありほとんどの人が立体視を体験出来ているようでした。
 実際には鏡を使わなくても左右の配置さえ間違わなければ立体視は体験出来ます。しかしながら、初めての方にそのれを理解してもらって作品の前で混乱が生じないのうにするのは難しいでしょうから、「出来ない」と説明しておいて立体鏡を準備しておいたことはよかったと思いました。そして壁に掛けられた作品は立体視出来ないよう左右逆になっていました。(上野の森美術館では混みあっていたのでなかなか見るタイミングが難しかったです。立体視しようとする前を通行されると焦点を合わすことが非常に困難ですね。)
 今回の図録でこの作品は交差法で立体視を体験出来るように掲載されています。(全画集も同じ) しかもページ境が中央なるように配置されていて見易くなるように配慮されています。よって、実際の展示とは左右が逆です。

ダリのDVD

 展示会場内のDVDの部屋があり、2台のディスプレイに同じ映像が映されていました。ダリがチャールストンをしたり、チョコレートのコマーシャルに出たりハルスマンと仕事中にかかってきた電話の応対の他に、ポルト・リガトで撮影された映像など30分弱程度の映像でした。出口に近く椅子で休憩するのにちょうどよかったです。

展示室外のDVD

出口の売店脇では3台のDVDが並んで設置してありポルト・リガトやフィゲラスの様子を映す映像がながされていました。3台のDVDはそれぞれ異なる映像でしたが画面変化がゆったりしていて音声による説明もないことから無理なく3つの画面を鑑賞出来ました。
 さらに売店正面では「アンダルシアの犬」が上映されていました。これは上野の森美術館と同じですね。私は久しぶりに全体を通して鑑賞しましたが、展示室内でないためか関心のある人が少なく15あまりの椅子が寂しそうでした。

展示されなかった作品

図録に掲載されているが実際には展示されていなかった作品は「クリスマスのアレゴリー」(全画集No.827)と「パラディオのタリア柱廊」(全画集No.670)です。

常設企画展では、「シュルレアリスムの世界展 」

常設企画展では、「シュルレアリスムの世界展」が開かれていました。ダリ展にあわせて同美術館で所蔵しているコレクションの中から日本のシュルレアリスムの作品を紹介しているものです。三岸好太郎や北脇昇など17作品が展示されています。

その他の映像