全画集1358 6つの本当の鏡が一時的に反映する6つの虚角膜によって永遠化された後姿のガラを描いている後姿のダリ

更新日:2002/10/27

 

英語タイトル Dali from the Back Painting Gala from the Back Eternalized by 6 Virtual Corneas Provisionally Reflected in 6 Real mirrors
(参照出来るポスターがありません)
副題 立体鏡的絵画の中のダリとガラ
制作年 1973年(未完)
大きさ 縦60.0*横60.0cm
所在 フィゲーラス、ダリ劇場美術館

 著作権所有者の許諾未了のため映像を表示していません。TASCHENの全画集を参照ください。上記No.は全画集に表記のナンバーです。 管理人abe

管理人の感想

 神秘的な雰囲気を強く感じます。明るい外の世界が、ガラの背中と窓を通してダリのキャンバスのに集約されていく過程を見ているようです。

立体視作品

 この作品は立体視の作品です。立体視をするためには、左右それぞれの目の視点のズレの分だけ微妙に異なる絵が必要です。左目用の絵を左目で見て、右目用の絵を右目で見ることによって立体を認識することができます。
 ダリはこの作品を中折れの鏡を使って鑑賞するように考えていたようです。鑑賞者の顔中央に左右中折れの鏡を置いて、それぞれの鏡に左目用と右目用の絵を映して、立体感のある映像を創り出そうとしました。しかし、この作品は未完成です。全画集No.1358は右目用の絵です。左目用の絵は講談社の「ダリ全集Ⅲ」の407ページに掲載されています。
 全画集No.1356には、左目用の絵を掲載するつもりが、誤って同じ右目用の絵を掲載しています。つまり、まるっきり同じ絵が2枚掲載されています。 立体視作品は右目用と左目用が僅かに視点をずらして描かれているので、きちんと理解していないと間違えてしまうことが多いです。これは、画集編集のみでなく企画展でも同じです。

立体視絵画の原点

ダリは3次元画像の可能性に前から気付いていて、3次元のポストカードを見るための眼鏡も持っていました。また、フェルメールと同時代のオランダ画家ヘラルト・ダウの絵を研究し、微妙に異なる同じ絵があることに気付き、これら一対の絵が立体的に見えるように描かれていたという結論を出しました。

6枚の鏡の意味

 この絵のタイトルをみて分かるように、鏡がキーポイントになっています。
   ・壁に掛けられた鏡に向かってガラが腰掛けています。
   ・その背後にキャンバスを前にしたダリがいます。
   ・この絵を描くためにはダリの背後にも鏡を置かなければなりません。
   ・その鏡に映った映像を見るための鏡を、ダリの前にも置かなくてはなりません。
 つまり、ダリは2つの鏡を通して、ガラや自分自身の後ろ姿を見ていることになります。さらに、立体視を体験するためには、その絵をもう一回鏡に映すことが必要です。よって、最終的にこの絵を立体視で見る人は3枚の鏡を通してガラとダリの後ろ姿を見ることになります。上記したように、左右別々の絵を左右別々に見るのですから、3枚*2の6枚の鏡を通して出来た映像となります。タイトルにある6枚の鏡の意味はこのように説明できると思います。

ラス・メニーナス

 ダリは、ベラスケスを自分よりも優れた画家であると言っています。ベラスケスの絵に影響されてもいますし、モチーフとして使用しているものもあります。この作品に使われている「鏡」は、ベラスケスの「ラス・メニーナス」にヒントを得たものと考えられています。

フェルメール

 「窓から差し込む柔らかな日差しの中にいる女性を、キャンバスの前にいる画家が描いている絵」といえば、フェルメールの「絵画芸術」を思い浮かべる人がほとんどではないでしょうか?ダリは、フェルメールを画家として最も優れている画家であると評価しています。 この絵を見て分かるように、ダリは、ベラスケスばかりでなく、フェルメールの絵をもこの絵の中に取り入れているのは明らかだと思います。