全画集0906 聖アントニウスの誘惑

更新日:2002/12/01

英語タイトル The temptation of saint Anthony(参照画像
制作年 1946年
大きさ 縦89.5*横119.3cm
所在 ブリュッセル、ベルギー王立美術館

 著作権所有者の許諾未了のため映像を表示していません。TASCHENの全画集を参照ください。上記No.は全画集に表記のナンバーです。 (アート オブ ポスターさんに参照出来るポスターがあります。) 管理人abe

管理人の感想

 荒涼とした砂漠の中で、極端に重心が高くて危ういながらも自己主張のある馬や象が次々に寄せてくる様子は、運命が押し寄せてくるようなイメージが湧いてきます。また、危険に満ちた象の足元には父に手を引かれたダリがいます。

この作品が制作された背景
この作品は、映画のイメージに合わせた絵のコンテストに出品されたものです。
 その映画はモーパッサンの「ベラミ」を下敷きにした気品で「ベラミの私事」という映画でした。監督であるアルバート・レーウィンは映画の小道具としてイメージに合った絵のコンテストを思いついたのです。
 映画は不評で興行も中止され、映画の歴史に何も残しませんでした。しかし、このコンテストのおかげで、絵画の歴史に名作を残すことになったのです。
 ダリに限らず自己主張過剰気味な画家達が、このコンテストに応募したのは信じられません。12人が応募し、一人が締め切りに間に合わなくて11作品が選考にかけられました。
   1位=マックス・エルンスト
   2位=イワン・アルブライト
   3位=ポール・デルウォー
   ダリは落選、他にドロテア・タニングなど
     *1位の賞金=2,500ドル
     *参加賞金 = 500ドル
   (以上は朝日新聞1987年3月8日による)
   (一部の文献にはダリの作品が2位だったとする記述がある。)
 なお、この絵の制作の背景は朝日文庫の「世界名画の旅4、ヨーロッパ中・南部編」に詳しい記述があります。
 
          マックス・エルンスト:聖アントニウスの誘惑(1位作品)
          1945年、(108*128cm)
          ドイツ、デュースブルク、ヴィルヘルム・レームブルック美術館
ダリとエルンスト

ダリとエルンストはほぼ同年代の画家であり、シュールレアリスムの画家として比較されることが多いです。
 この2人の作品を比較しても、同じテーマとは思えないほどの相違があります。魑魅魍魎が蠢くグチャグチャしたエルンストの作品に対して、ダリのそれは、乾ききった砂漠に出現する妄想の産物です。