更新日:2002/10/12
英語タイトル | The great masturbator(参照画像) |
制作年 | 1929年 |
大きさ | 縦110.1*横151.1cm |
所在 | マドリード、ソフィア王妃美術館 |
著作権所有者の許諾未了のため映像を表示していません。TASCHENの全画集を参照ください。上記No.は全画集に表記のナンバーです。 (アート オブ ポスターさんに参照出来るポスターがあります。) 管理人abe
管理人の感想 |
柔らかさと硬さが同居するこのモニュメントは、内部からの力で変形しながら形作られていくようです。
ガラとの出会い |
1929年の夏に、カダケスを訪れたガラにダリは心を奪われました。自慰行為が性的陶酔感の中心であるダリを理解し、性に起因したヒステリーからダリを開放したのがガラでした。ガラとの出会いで、ダリ家の甘ったれが一人の男性に変貌していくことになりました。
この作品は、ダリとガラが出会い、数ヶ月後にパリへ戻るガラを見送ってから描かれた作品です。性に対する自分の性癖を隠すことなく、ある意味でおおらかに表現できていると思います。モニュメント全体が遮るものない強い光にさらされています。
また、肉体としての「柔らかさ」と、突上げてくるリビドーの「硬さ」が同居した作品と言えると思います。
クレウス岬の奇岩 |
ポルト・リガト周辺のクレウス岬には奇岩が多くあります。「大自慰者」のモニュメントそのものもあります。ポルト・リガトはダリのインスピレーションの源であり、この地にアトリエを構えなければならなかったのです。
グニャグニャのモニュメント |
ダリの作品は「偏執狂的批判的方法」などと難しげな表現をしますが、基本的にはカダケスを中心とした自分の育った風景の中での実体験の再現と言えると思います。
ダリが6~7才の時に、カダケスに近い漁港の浜辺に鯨が打ち上げられるという事件がありました。それは、浜辺に横たわるグニャグニャした死の臭いのする塊りだったに違いありません。
この作品以降、このモニュメントは頻繁に登場するようになります。ダリの作品を代表すべきあの「記憶の固執」は、あまりにも有名です。
におい |
この作品の右側には女性が描かれています。これは、百合の花の香りを嗅いでいる絵からの引用なのだそうです。確かに、女性の胸のあたりには百合の花が描かれています。しかしながら、この絵のなかでは、男性の股間の匂いを胸いっぱいに吸い込んでしまっています。眼を閉じているので、百合にこだわらなく嗅ぎたいものを嗅いでいるというところでしょうか?
この女性もグニャグニャのモニュメントも目を閉じているのは、ダリの夢想の世界を意味しているからではないでしょうか?
絵の所在 |
この絵の所在は、大部分の画集で「個人蔵」となっていますが、実際にはマドリードの「ソフィア王妃美術館」に展示されています。マドリードへ行って直接見てきたいちぶさんにダリの掲示板で情報提供していただいたので分かりました。
いちぶさん、ありがとうございました。2002年1月14日、管理人abe